せとうちMeetup Vol.1:from神石高原町_開催レポート

せとうちMeetup Vol.1:from神石高原町_開催レポート


 2020年5月30日(土)14時より、「せとうちMeet up Vol.1」を開催しました。「せとうち」をキーワードに、様々なエリアの方々との新しい繋がりを織り上げていく、「せとうちMeetup」。今回は、「せとうち」に在る里山の一つ、神石高原町の農園からの中継を交え、瀬戸内の山間部・農村部と様々なエリア・セクターを繋ぐセッションとなりました。

イントロダクション、チェックイン

 簡単な趣旨説明の後、自己紹介を兼ねて参加者の方から近況のシェア。観光、飲食・宿泊、通信、製造、福祉、農林行政等、様々な分野の方に御参加いただきました。皆さんの近況の内容もコロナ禍に関わることが多く、瀬戸内地域でも事業環境が厳しさを増す中で様々な取り組みをされている方、コロナ禍の中で移動にも制限があるが、情勢が落ち着けば、過去来訪時の印象がよかった瀬戸内をまた訪れたい・関わりたいといったお気持ちの方、農林関係者の全国的な繋がりを活かして農林業で地域を盛り上げる取組をされており、瀬戸内でもそうした取り組みを広げたいとお考えの方といったように、参加者の皆さん、それぞれの立場で瀬戸内に対して、強い関心や思いがあることを感じました。

今回のホスト役:藤井さんから、マルチ就業(農)と2拠点生活についてのお話

 続いて、今回ホスト役の藤井さんから、御自身が経営されている神石高原の農園「ふじい農園(仮)」の紹介を中心に、御自身の生活について、お話をいただきました。

・海外での経験や会社員時代を経て、数年前にUターン移住。現在は、農家兼、大学非常勤講師兼、編集者として、福山市と神石高原町の2拠点で生活。その中で、何かを変えたい時に、必要な誰かや何かと繋がる場を創ることに関わりたいとWeaveの前身の任意団体の取組に参画。現在はWeaveの理事もしておられます。

・農家としては、田や畑(それぞれ3アールずつ(詳細な面積は不明))で、アスパラ、米、ブルーベリー、シャインマスカットを栽培し、直販や産直施設・農協に出荷しているとのこと。直販はSNSを通じて関東の方にも送られており、現金ではなくアスパラが通貨代わり(物々交換)になることもあるそうです。お米や野菜、お昼ご飯や近所の温泉の風呂券をお礼にして、農場の作業を勤務先の学生達と一緒にすることもあるとのこと。(これができるのは藤井さんの人柄によるところも大きい・・・。)。また、栽培しているシャインマスカットでオリジナルワイン!!を委託醸造しており、今年はワイン用品種を定植しているとのことでした。

こんな、マルチな才能を発揮されている藤井さんが、今後したいこととして挙げられたのは・・・

1.学生たちの参加など、外の人たちを地域に受け入れられる体制を拡大(就農体験や2拠点生活といったことをきっかけに。)

2.ニホンミツバチの飼育(今はハチミツを分けてもらうばかりですが、自分でも!)

3.ポストアスパラ(アスパラの寿命はあと数年。次は、どうする?)

藤井さん、いろいろ攻めてますね~。

参加者のフリートーク(藤井さんからのお話をベースに)

 藤井さんからのお話をベースに参加者のフリートーク。

・神石高原では、日中、人と出会わないのが普通。このセッションの間も家の前を車が通ったのは1台だけ。田舎はそんな感じ。人とぶつからないように気をつけて歩かないといけない都会とは違う感覚。

・福山や三次といった近隣(県内)のちょっとした街との行き来だけで、神石高原では、新型コロナとの関わりを疑われ少し変わった目で見られてしまう。高齢者が多く、山間の集落といった限られたエリアで生活しているため、それはしょうがない部分もある。

・災害関連でいえば、近年の豪雨災害時の時には、人との接触が少ないので、災害時には被害にあっても誰にも気づかれないかもしれないという恐れはある。これまでの災害では、何とか誰かと繋がれていたから助かってきている。

・農業をやっていくうえで、水利等の共同管理や重機の共同利用等々で組合的な繋がりが地域にある。責任を伴うもので、楽なものではないが、こうした繋がりがあるから、地物の大豆を原料に味噌を作り、作った味噌を地域で融通し合うといった取組も残っている。

・一方、都市部では、コロナの関係で出勤自粛のため、2か月間職場に行っていないという状況があり、職場の同僚とかは、世の中に置いて行かれた感じがして、不安でしょうがないという人もいる。

・コロナ禍によって様々な影響が出ているが、住んでいる地域や所属しているセクターによって、コロナ禍で被害を受けた人とそうでない人との差が激しいし、受け取り方にも差がある。例えば、農業など直接物を作っている人は、こうした危機に強いなとつくづく感じた。

・3密を避けたり、オンラインでの関わりが進展して、リアルな人と人との関わりが縮小している状況にある。そのような中でも、人と人との繋がり・信頼関係を充実させていきたい。

・地元の観光地(鞆の浦)の苦境に際して、クラウトファンディングでマルシェを実施して、地元の事業者に出店の機会を創り、地域の中で必要な繋がりが維持できるように取り組んでいる。こうした、いろいろな人や地域を繋げる取組を、他地域に拡げたり、次世代に引き継ぐ知恵を模索中。

・「せとうち」の海と山をどのように繋げていくか。私の場合は、三原の佐木島との関わりで柑橘の収穫の手伝いをしており、神石高原のアスパラと物々交換をしている。

・今は、都会と農村の二拠点の生活をそれぞれ楽しんでいる感じ。現実的には、家の維持管理が一番面倒ですが、標高差を利用した作物の時差のおかげで旬を2回楽しめたりもします。往来の際には農産物の配達等他の用事を絡めて、負担を少なくする工夫をしている。

・都会の暮らしと農村の暮らしの半々ずつくらいが丁度よいと思う。人とまったく会わない生活もよくないが、マイペースでゆっくり過ごすことも必要。都会でも農村でも、人との繋がりは必要。

 以上のように、二拠点生活、コロナ禍の影響、都市部と山間部の価値観、人や地域の繋がり等々について、フリートークの中で、ここに書ききれないほどの様々な対話が展開されました。

クロージング:参加者の思いを共有

 最後に、対話の内容について、参加者それぞれの思いや気づきを全体で共有しました。

・2拠点生活に興味があったが、実際話を聞いてみて、拠点が複数あることが魅力的に感じられた。また、今回のコロナ禍の影響で都会のスーパーには品薄になっている物もあるので、農への関わりを深めたい。

・求められる「新常態」の生活は、里山での生活と親和性がある。里山での生活様式は昔懐かしいライフスタイルでもあり、そうしたものをスモールステップで始めてみて、楽しみ味わう。そうしたことを今、求められている新たな生活様式に繋げられたらよい。

・オンラインで繋がって、実際に現地に行った感じになるのがよかった。アスパラガスの花を初めて見ました…。自粛が続いているので自然の鳥の声を久しぶりに聞きました(^^)。鞆の浦に行ったこともありますし、行ける状況になれば、また行ってみたい。

・Meet upで鞆の浦を案内してください!

・昨日もオンライン会議で時代は変わったと実感。ただ無駄を省いて効率的だが、これだけでは寂しい。新型コロナに委縮してばかりではなく、果敢に日常を取り戻したい。

・アスパラやワインで物々交換ができる、通貨の代わりになるというところが興味深い。海や山で生活している強みといった自分や地域が持っているものの強みや価値といったものが、通貨のような流通も交換も可能な価値基準になりえるのではないか。物だけではなくサービスも強みになる。だから、今後は、実際に物を作ったり、サービスを提供する人が強くなると思う。

 2拠点生活については、密集を避けた分散型のシステムにも親和性があるとともに、環境の異なる2つの拠点で生活をすることで、異なる価値観を取り入れてみたり、それぞれで足らないものを補ったりすることができることを魅力的に感じておられたり、日本古来からの里山での生活様式が、実は今、求められている最先端の生活様式に繋がる部分があることなど、分散型システム、新常態、新しい生活様式、といった今、巷でよく聞かれるキーワードに通じる内容が今回のmeet upの対話の中に多く含まれており、興味深い内容でした。

 私達の暮らしも仕事も、これから大きく変わっていきそうな時代。今後も、瀬戸内の海、まち、山を結んで、瀬戸内から離れた大都市と結んで、「本当の豊かさとはなんだろう?」「それをつくる暮らし方や仕事とはどんなことだろう?」
を、多様な視点から様々に話し合っていきたいと思います。

 次回のMeet up  Vol.2は、6/20(土)の夜20時よりスタート。
「せとうちの食」をテーマに、皆さんの「私のせとうちソウルフード」を語り合い、シェアしていきます。気軽な雑談会の場として、あるいは、それぞれの地域やそこでの暮らし、活動を紹介するシェアの場として、ぜひご参加ください。

あとがき

 生活に必要最小限のものはある程度自給できる、作った農産品が通貨の代わりにもなる!(物々交換と言ってしまえばそれまでですが・・・)といった里山・農村部の生活様式は、コロナ禍で動揺しているこれまでの生活の今後を考えるうえでいろいろな示唆を与えてくれると思います。グローバル経済のサブシステムとしての里山資本主義の必要性という藻谷浩介さんの話が頭をよぎりました。

 また、農村部に残る地縁的な繋がり(「結」とかが当てはまる?)、水利や重機を共同管理したり、労役や生活必需品を融通しあったり、面倒なことも多いと思いますが、これがあるからこそできていることも多いと思います。
こうした繋がりを現代の大都市や地方都市でリメイクするにはどうしたらよいのか、どうなるのか・・・。
これからも模索していきたいと思います。

ライター:一般社団法人Weave 監事 岡本耕治