せとうちMeetup(Vol.5)開催レポート:「ニホンミツバチ採蜜体験Online」

せとうちMeetup(Vol.5)開催レポート:「ニホンミツバチ採蜜体験Online」


「せとうち」をキーワードに、様々なエリアの方々との新しい繋がりを織り上げていく「せとうちMeet up」。
2020年8月9日(日)朝7時30分より、「せとうちMeet up 夏休み特別編 (Vol.5) from神石高原町 日本ミツバチ採蜜体験(online)」を開催しました。

今回は、「里山の自然の営みに触れ、恵みをいただく」がテーマ。

神石高原町の一角にある日本ミツバチ研究所を舞台に、事前に採蜜したハチミツをお送りして、それを味わいながらオンラインで採蜜に参加していただく、という試行的な取り組みでの開催でした。

コロナの影響で現地での採蜜体験が難しい中オンライン中継で、自分で巣箱から直接はちみつをすくい取って、口にしているような感覚を味わってほしいとの神石の日本ミツバチ研究所の方の思いで実現した今回のMeetup。
瀬戸内の山あいにある農村部と様々なエリア・セクターを繋ぐセッションとなりました。

イントロダクション、チェックイン

蜂の生態に合わせた7時30分という早朝開催のmeet upにも関わらず、17名の方に御参加いただきました。農業、食材、オンラインでの採蜜体験等々、参加者の皆さんそれぞれに、本meetupに強い関心を持たれていることを感じました。

簡単な趣旨説明の後、自己紹介を兼ねて参加者の方から近況のシェア。
今回は、日本総研の藻谷浩介さんも、meet upの冒頭から御参加されるとともに、観光、農産品販売、営業・販促、事業支援、農業、医療、福祉等、様々な分野の方に御参加いただきました。

オーガニックな養蜂やハチミツに興味があるといったお話はもちろん、
・瀬戸内地域でのサイクリングの途中に提供するアクティビティとして採蜜を取り入れられないか
・コロナ禍で営業環境が激変しており、このmeetupのようなオンラインの取組に可能性を感じている
・事業のアイデアのきっかけにしたい
といったお話がありました。

今回のホスト役 日本ミツバチ研究所の所長、東一史さんからの概要説明

続いて、今回ホスト役の東一史さんから、運営されている神石高原町の「日本ミツバチ研究所」の取組の紹介や日本ミツバチの生態や採蜜の話を中心に、お話をいただきました。

学校の先生をされていた東さん。
教職を退いてからも、子どもたちが、地域に誇りを持つ活動、身近にある山野に誇りを持つ活動とは何かを考え続ける中で、自生する日本ミツバチが身近な山野を巡り、豊かな恵みを我々に提供してくれることに注目し、取り組んでこられたとのことです。

以下、東さんからの説明内容です。

・ミツバチが与えてくれる恵みはハチミツだけではなく、ミツバチが山野を巡るおかげで、植物のポリネーション(花粉勾配)が促進されている。

・農作物の受粉をより完全にすることは、価値の高い農作物を作るうえで欠かせないこと。統計の取り方にもよりますが、ポリネーション(花粉交配、ミツバチ以外のものも含む。)の経済効果は、全世界で数兆円、日本国内での約4000憶円とも言われている。

・日本ミツバチは、西洋ミツバチとは異なり、日本各地の自然豊かな里山に自生するミツバチ。絶滅危惧種とも言われていますが、神石高原町内にはあちこちに生息している。

・日本ミツバチは、西洋ミツバチに比べ、性格が穏やかで扱いやすい。日が昇り暑くなるとミツバチが活動的になり採蜜が難しくなるため、早朝の採蜜がよい。撹拌機は使わず、自然落下できれいな蜜がとれる。日本ミツバチの採蜜ではこの自然落下の方法が拡がると考えている。

・ミツバチを自分で飼って、自分で作った無農薬、無添加のハチミツを楽しむ。無農薬・無添加のハチミツを食べることで病気への抵抗力がつく等自分自身の健康維持にもつながる。

採蜜体験1:まず、巣箱から日本ミツバチの巣を取り出します。

さて、いよいよ、採蜜体験です。
事務所のすぐ横にあるハイブリッド巣箱から、採蜜用の巣を取り出します。
普段より、遅い時間(といっても朝8時前ですが・・・)のため、日本ミツバチがいっぱい出てきましたが、女王バチがいる元の巣箱にどんどん戻っていき、ミツバチを「飼っている」という様子に参加者からも驚きの声が上がっていました。
東さんのお話によると、日本ミツバチは、仲間が殺されないかぎり、こちらを攻撃してくることはないとのこと。採蜜の際も、時間を掛ければ、採蜜用の巣箱を叩いたりしなくても、自然に女王バチがいる基の巣箱に移動し、犠牲バチがでることはあまりないとのことでした。

採蜜体験2:巣から蜜を取り出します。

続いて、巣箱から取り出した巣をろ過用のシートを引いたザルに入れ、パン切り用のナイフで小さく切っていきます。
すると、蜜が自然落下で蜜が滴り落ちていき、あっという間に、容器の中に蜜が溜まっていきました。
東さんによると、日本ミツバチの巣は柔らかく撹拌機に駆けられないので、この自然落下の方法がよいとのこと。
これだけでも見ごたえがあるとの参加者からの声もありました。

なお、参加者の皆さんには、採蜜の様子を熱心に見ていただいたようで、中継中には、「カメラをもっと寄せてほしい」、「カメラを横向きにして広角に写して」といったカメラアングルのリクエストもあるくらいでした。

採蜜体験3:取ったばかりのハチミツを試食。

東さんから勧められて、コムハニー(巣蜜、巣房に入ったままの状態のハチミツ)をいただきました。コムハニーの市価は通常のハチミツの2倍だそうです。

準備されていたクラッカーやカマンベールチーズ、鴨肉に載せて食べてみましたが、「美味しい・・・」。これ以外ではなかなかコメントのしようがなかったという事で御理解ください。(運営スタッフの食レポのセンスを磨かないといけませんね。)、参加者の方からは、「美味しそうなコム!」等、コムハニーへの垂涎のコメントが寄せられました。スタッフだけいい思いをして、ごめんなさい。

取り立ての巣蜜の味の濃さに驚きましたが、東さんによると、今はまだ巣内に水分が多く糖度が低いので、もう少し後、秋頃になるとより糖度が高いハチミツが取れるとのことでした。

採蜜体験4:東さんのお話をベースに、質疑応答・フリートーク。

その後は、東さんのこれまでのお話をベースに、質疑応答とフリートーク。

〇ハチミツの保存・保管について

・東さんのところのハチミツは、自然落下で巣房の蜜を取ると、すぐに瓶づめにするそうです。その瓶づめされたハチミツを-20℃の冷凍庫の中で保存しておくと、無添加のハチミツは凍ることなく、何年もきれいな蜜のままで、保存できるとのことです。(参加者の方からは、今までは、つい冷蔵してしまうので、今まで結晶化させてしまっていたとの声が聴かれました。)

・賞味期限、消費期限は東さんのところのハチミツは1年としている。保存は冷凍庫保存であれば3年くらいもつ、純粋ハチミツは常温だと必ず結晶化するが、温度を調整すれば元の澄んだ状態にもどる。ただ、安価なハチミツはそうはいかない。信頼できるところからハチミツは買った方がよい。今回のmeet upでお送りしているのは、ここ数年で最上級のもの。西洋ミツバチの蜜に比べると淡い色だが、そのくらいの色の蜜が一番おいしい。

〇日本ミツバチやそのハチミツについて

・春から秋は、小さな花が山に一杯咲いている。日本ミツバチは小さい花を好むので、色の淡い、味わいのある蜜ができる。

・日本ミツバチは、様々な花々から、それぞれの花の一番いいの時の蜜を必要なだけ摂ってきて巣内で半年熟成する。西洋ミツバチの熟成期間は2週間程度。

・話題になったマヌカハニーは、ローマ教皇が体調管理に使って世界に広まっている。通常の2倍、3倍の価格がする。そうしたハチミツに比べると、日本ミツバチのハチミツはえぐみが少ない感じ。

・蜂の健康チェックは、1週間~2週間ごとに行っている。巣箱を見て個体の数が増えていたら箱を下から足していく。個体の数が減っていたら環境がよくないということで原因を見極める。個体数の増減バランスをみて環境調整等を行っている。

・日本ミツバチは、蜂を殺さない限り、攻撃スイッチは入らない。攻撃的になるのは冬場。12月からは攻撃的になる。春から秋はおとなしいが、冬は注意。西洋ミツバチは、巣への進路を遮られると怒って攻撃的になる。

・1歳未満の子については、ボツリヌス菌に対応できる腸内環境がまだ整っていないので、ハチミツを食べさせてはいけない。

〇その他、蜜ろう等について

・蜜を絞った後の巣房などの残さは、固めて、後で溶かしてろうそく(蜜ろう)にしたり、蜜ろうラップにしたり、オイルを足して蜜ろうクリームにもできる。ただし、採蜜後の残さを加工品に使えるのは、無農薬で作った蜜の残さのみ。ミツバチの飼育で抗生物質やダニ除け材を使うと巣に薬剤が残留して使えない。

・養蜂も蜜ろうクリームも自分でやってみることをお勧めしたい。2km以内に里山があれば、日本ミツバチは大概いる。一つの巣の女王から、長女から三女くらいに分かれるので、近くに巣箱があれば、その近くに新しい巣箱を置かせてもらう。ハイブリット巣箱で、所要の条件を整えば、1箱あたり3割くらいの確率で新しい巣箱に蜂が集まってくる。

 以上のように、日本ミツバチやそのハチミツの特徴、採蜜後の残さの活用方法等について、参加者の興味は尽きず、次々と質問があり、様々な対話が展開されました。

クロージング:気づきを共有。

 最後に、対話の内容について、参加者それぞれの思いや気づきを全体で共有しました。

・日本ミツバチ、西洋ミツバチの違い、ハチミツの効能等がよくわかった。その土地の山野と融合・循環し自然の恵みをいただく養蜂という仕組みは、これからの時代にあったもののように思えた。

・近隣にいるので、ぜひ現地を訪ねたい。

・ハチミツもすごいが、蜜ろう等、採蜜によって生じる残さの用途の幅広さに驚いた。

・リアルタイムで採蜜を見ることができるのは、とても貴重で楽しい体験だった

・山野の小さな花々から少しずつ蜜を集めゆっくり熟成させ育てること、そして、できるだけ自然な形で採蜜する日本ミツバチの優しい採蜜の方法を知ることができて良かった。

・日本ミツバチについて知ることが出来たのと、東先生のミツバチへの愛を感じました。

・瀬戸内に住んでいて、神石高原には自転車でも行くので、現場で生で見てみたい。

養蜂という農業の仕組みが、これからの時代に合っているとの発言がありましたが、日本ミツバチやハチミツなど、地域の山野やそこに自生する様々な生き物の営みから生まれる恵みは、我々の生活を大変豊かなものにしてくれます。こうした自然からの恵みは、長い時間をかけて形成された自然界の循環や連鎖、調和といった環境そのものに拠るところが大きく、その維持には、自然環境と人間の営みの調和や融合といったサスティナブルな取り組みが欠かせません。ポイントは、ゆっくり、自然に、時間をかけて、といったところのように感じました。

 過去のmeet upでも農村・里山の生活を取り上げましたが、日本古来の里山での生活様式が、今、求められている生活様式、分散型で環境負荷が少なくサスティナブルな生活様式に繋がる部分が多いとを改めて感じました。昔からある里山の生活様式に、最新の情報技術等を組み合わせていくと、どのような相乗効果が生まれるのでしょうか。

オンラインでの採蜜体験に挑戦した今回のmeet up。
我々運営スタッフにとっても貴重な体験でしたし、参加者の方からのさまざまな視点やご意見からもたくさんの学びをいただきました。
ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。

次回、6回目となる「せとうちMeetup」は、 シーズン1での最終回。
8/22(土)の14時より、広島県福山市の古くからの商店街「とおり町(ちょう)」をブラ歩いて行きます。

実は、Weaveの拠点でもあり、「まちの中にあるフューチャーセンター」「まちの中の実験場」としてオープンした「Oru」は、このとおり町のすぐ横にあります。「とおり町」をブラ歩きながら、まちの変遷とこれからの「新しい活性化」とは何か?」を考えながら、そのまちに中にある「新たなサードプレイスのあり方とその役割」についても話し合っていければと思います。
皆さんのご参加をお待ちしております。

あとがき

 例えば、養蜂に係るポリネーション(花粉交配)は、間接的な貢献でなかなか可視化できませんが、地域の農産物の価値向上や環境維持にとても重要であり、大きな効用があると感じました。また、農村・里山の生活では、価値のあるものを利用したり共有していても、自分で作ったり地域で融通し合っている場合は、お金の出入に現れないことも多いように感じます。農村・里山の生活における、地味な、目に見えない貢献や経済的効用を上手に可視化し表現できれば、農村・里山での暮らしの豊かさをより適切に伝えることができるようになると感じました。

ライター:一般社団法人Weave 監事 岡本耕治