【開催レポート】神石高原ワーケーション×せとうちMeet up 神石高原ワーケーション×せとうちMeet up 5年後に売り場から野菜が消える!〜農業の抱える問題が直撃する道の駅が考える次の一手〜(2/26開催)

【開催レポート】神石高原ワーケーション×せとうちMeet up 神石高原ワーケーション×せとうちMeet up 5年後に売り場から野菜が消える!〜農業の抱える問題が直撃する道の駅が考える次の一手〜(2/26開催)


2022年2月26日(土)13時30分から、神石高原ワーケーション×せとうちMeet up 第2回を開催しました。

▼神石高原ワーケーション×せとうちMeet up とは

ワーケーションに最適な町、神石高原町の様々な活動や課題について、里山資本主義の生みの親である藻谷浩介さんの解説を交え、参加者のみなさんと一緒に考え、ディスカッションしていくプレワーケーション・オンラインツアーです。

舞台は、広島県東部にある神石高原町。標高約 500m、中国山地が南に張り出した地形に位置する、森林に囲まれた高原の町です。福山市から北へ、車で1時間程度のところにあり、人口は約8500人。

http://www.jinsekigun.jp/town/introduction/1/

神石高原町は「挑戦のまち」をキャッチフレーズに、様々な新しい試みを応援しています。

本イベントは、オンラインからはじめるワーケーションのはじめの一歩として、神石高原町が主催し、一般社団法人ninaと一般社団法人Weaveにより企画運営するものです。

・一般社団法人nina https://nina-jinseki.com/

・一般社団法人Weave https://www.weave.or.jp/

当日は、道の駅さんわ182ステーション内の直売所の一角を会場に、東京の藻谷さん、神石高原町の北にある庄原市の道の駅たかののスタッフや出荷者、最年少の地元・油木高校生を含む全国各地の参加者20名をオンラインでつないでスタートしました。

▼道の駅さんわ182ステーションについて

会場となった182ステーションを上空から見ると…

今回、ツアーで訪問したのは、神石高原町南の玄関口にあたる道の駅「さんわ182ステーション」。道の駅取締役統括部長の延岡英憲さんにご登場いただきました。

延岡さんは、神石高原出身の52歳。47歳まで福山の企業で飲食店・映画館広報、コワーキングスペースの運営などに従事していましたが、藻谷さんとの出会いをきっかけに帰郷し、現在、さんわ182ステーションで町おこしに取り組んでいます。

さんわ182ステーションの前身は、1985年に開設された無人野菜販売所「なかよし広場」。

2020年3月にリニューアルオープンし、産直市場の売り場面積を拡大、カフェや自然食レストラン、コンビニエンスストア、観光案内所を併設し、町の観光・販売拠点として町内外の人でにぎわっています。

訪問客の8割は福山市から。標高差が500メートル以上あり、車で1時間近くかかるにもかかわらず人々が訪れ、開設時から人気が続いています。ちなみに、さんわ182ステーションの2021年度の売上は約6億円。

・道の駅さんわ182ステーション

https://182station.jp

▼さんわ182ステーションが抱える課題

神石高原町は2人に1人が65歳以上。人口減少・高齢化による後継者不足、中でも野菜や加工品の作り手・担い手が不足しており、5年後には農業の担い手が激減すると予測されています。

現在までに

・柚子加工品の生産グループの解散危機

・町内唯一のホテル(神石高原ホテル)閉鎖による宿泊場所の減少

といった問題が発生しています。

特に大きな打撃となっているのが、2021年6月から法改正で漬物が 届出制から許可制になったこと。

それまでは届出をすれば販売可能だった漬物が、「漬物製造業」としての営業許可と、専用の設備(粗洗い場、加工施設、保管施設など)が必要となり、多額の設備投資を要します。

現在活動している68名の漬物農家は、2年後の2024年5月まで新たに営業許可をとらなければ漬物の販売が不可能になります。ちなみに、漬物農家の2021年の売上実績は、1600万円。

今後予測されるのは、

・漬物などの加工ができなくなることで、野菜の生産量を減らす農家が増える

・高齢化に伴い、道の駅への車での出荷が難しくなる

・耕作放棄地が増え、里山が荒廃

・獣害被害の増大、空き家の増加、名産品の消滅

・地元業者の人材確保が困難に

▼課題解決策として「TTP」の取り組み

上記の課題解決策としては以下の点が挙げられます。

・野菜の集荷活動

・野菜の端境期に行う加工品づくりと販売

  主な加工品として、ふりかけ、ピクルス、乾燥野菜、切り干し大根、干し柿、漬物、餅など

  加工品を販売するECサイトの運営

・野菜を確保するために、道の駅でも生産

しかし、さんわ182ステーション単体での解決に限界があるため、点を線に、線から面へつなぐ取り組みとして始めたのが「TTP」です。

「TTP」とは「Trance Town Partnership」。各自の強みを生かし、弱み(負担)を分担しながら目的を達成する共同事業体を意味します。

一例として、お土産TTPとして「相馬さんのプリン」を企画販売。

・相馬さん:自然放牧の牧場で牛乳をつくる

・道の駅:パッケージや販売を担当

・加工業者:プリンの製造

できる人ができることを役割分担しながら進める「仕組みづくり」を推進中です。

今後は、さんわ182ステーションが「地域商社」として、失われかけている町の財産をデザインし、町の価値を高めていきたい。町の人が幸せを感じながら、次の世代により良いバトンを渡すために知恵を借りたい、と延岡さん。

この後、延岡さんの案内で直売所を巡り、こんにゃく、プリン、はちみつなど、神石高原ならではの産品をリモートで見学。直売所では、野菜や加工品のほかに、販売している食材を使った弁当や惣菜も販売しています。

▼藻谷さんのコメント

藻谷さんから

・全国の道の駅を見て回っているが、さんわ182ステーションは広島県内でも印象深い道の駅

・神石高原町に目を向けると、人口が約8千人で町域が広く集落が分散しているが、高齢者は生 活に困っていない。その一つの指標が、住民1人あたりの生活保護費。

藻谷さんから延岡さんへ「広島県内の住民1人あたりの生活保護ランキングで神石高原町は何位ぐらいになると思いますか?」と問いかけがありました。

答えは最下位の23位で、住民1人あたりの生活保護費は6千円。

対して、広島市は4万円、福山市は2万8千円、東京都新宿区は約7万4千円。東京都の半分の区や市は広島市以上に生活保護費が多いことが分かります。

・広島県の住民1人あたりの生活保護費番付

 http://area-info.jpn.org/SehoPerPop340006.html

・東京都の住民1人あたりの生活保護費番付
 http://area-info.jpn.org/SehoPerPop130001.html

「過疎地を捨て、都会へ移住すべき」という意見もあるが、果たしてそうか。

故郷である田舎を出た人々が都市部に集中した結果、自ら生産するより消費過多な生活に変わってしまった。

一方、神石高原町は人口の2人に1人が高齢者でありながら、自分たちで生活できている。東京都と神石高原町の住民1人あたりの生活保護費を見れば、明らか。

「高齢者の多い田舎は金がかかる」というのは先入観に過ぎない。神石高原町のように、消費者としてではなく生産者としての暮らし方(地元で産品をつくり、販売して生計を立て、生きがいをもって生活)ができれば、実は福祉にお金はかからない。

自然環境を生かし、土地の人が脈々と育んできた里山資源(農産物や加工品)は、地域の財産であり、その地に住む人の生活の糧となる。田舎を出て都会に移住しても、そんな生活は手に入らないのだから、もっと見方を変えるべき。

と、藻谷さんから力強いエールが送られました。

延岡さんによる現在までの取り組み状況

・野菜の集荷・配達にドローンを活用する実験が始まっていて、50キロ(白菜なら20個)程度の荷物が運べる。ドローンが飛ばし放題という山村部ならではの地の利を生かしていきた い。

・集落が点在している神石高原町では、庄原のようなトラック集荷は難しいが、軽トラックを

 使った集荷は始めている

・有機栽培農家は増えている

・町内で高付加価値の商品を扱っている人に働きかけ、道の駅への出品を要請中

・長い目で見ると、野菜の生産が減ることによって、さんわ182ステーションへ野菜を買いに来ていた人がやがて「作り手」になるパターンも生じるのではないか、と予測

▼これから、さんわ182ステーションができることは?

今後、地域商社として生きる道を模索するさんわ182ステーション。その「これから」について、参加者に再びグループを変えて話し合いをしてもらいました。

藻谷さんのまとめ

皆さんの話を聞いて、さんわ182ステーションは単にモノを売るだけの場所ではなく、「次の展開ができる場所」と改めて感じた。

町内には独自のものづくりをし、高付加価値の製品(高級レストラン向けの食材など)を東京や世界を視野に入れ、販売している人が実はたくさんいる。

そんな人たちの製品の一部をさんわ182ステーションに並べてもらうことで、地域にその産品が広がるとともに、町内の他の事業者にも刺激となり、課題解決や今後の展開を考えるきっかけになる。知恵を持ち寄り、共に考えることで、コミュニティが生まれる。

このように、まだ出会えてない人と人がさんわ182ステーションを介して顔を合わせる機会があることが神石高原町の強み。

東京では各自が自由競争で、勝ち残っていくことが最重要課題、地域で連携するのは面倒と考える人が多い。しかし、年月が経ち、代替わりする時に上手く継承ができなかったり、後に出て商品・サービスに新規性がなくつまらないものになってしまう怖さがある。

また、東京は若い人が次々と出てきて、チャレンジできる場所のように今は見えるが、20~30年後には神石高原町なみに高齢化する。人口の半分が高齢者になったとき、身動きが取れなくなる恐れがある。

神石高原は逆に今、さんわ182ステーションを使いながら人をつなぎ、地域商社としていろんなことを考えていけば、そのノウハウが30年後に東京で必要とされる可能性を秘めている。楽しく皆で一緒に町を盛り上げる実験を神石高原町はしている。自分も何かしたい、という人はどんどん関わっていくとよい。

「人の活かし方」が都会と田舎では違う。東京と神石高原町を比較しても分かる通り、各自が勝手にやっていれば良かった時代は終わっていく。

と、町の内外で人がつながっていく重要性が語られました。

▼最後に

今回のイベントでは、現地とつながる特産品として、「こんにゃく3種(刺身こんにゃく・こんやく・こんにゃく麺)」と干し椎茸を希望者へお届けしました。特に、こんにゃくは在来品種の生産では神石高原町が日本一を誇り、延岡さんイチオシの逸品。マンナンが豊富でくさみがなく、ヨーグルトに入れてもおいしく食べられる自慢のこんにゃくを全国の皆さんに広く知っていただきたい、という思いがこめられています。

2時間のイベント後、約15分の放課後にも多くの参加者が残り、有意義な意見交換ができました。